学会について

バイオフィードバックとは?
日本バイオフィードバック学会前会長
西村千秋(元東邦大学医学部)

 "バイオフィードバック"というとなにか難しそうな印象を与えますが,それほど難しいものではありません。しかし見かけによらずその裾野は広く,大きな将来性を秘めています。まず,バイオフィードバックとは何かを説明しましょう。

 私たちの心身は外界からの刺激に反応して時々刻々変化しています。外部に向けては筋肉を動かしてそれに反応するとともに,内部では自律神経系や内分泌機能などを通じて体内環境を適切に調節します。

 ただ,その多くは無意識的に操作され,意識にのぼってくるのはごく一部です。したがって,体内状態を意識的に変化させる事態や必要性は,日常ではほとんどありません。そのため,私たちの体内状態を変化させることは意識とは無縁であると,長らく信じられてきました。たとえば,自分の体温を意識するだけで変化させることなどは不可能であると思われてきました。

 ところが,このような体内状態を適切な計測器によって測定し,その情報を画像や音の形で自身が意識できるよう呈示することにより,従来制御することが不可能であると考えられてきた諸機能を意識的に制御することが可能であることが分かってきたのです。

 このように,意識にのぼらない情報を工学的な手段によって意識上にフィードバックすることにより,体内状態を意識的に調節することを可能とする技術や現象を総称して"バイオフィードバック"とよびます。

 バイオフィードバックはすでに多くの分野で応用されています。まず,医療の方面で,気管支喘息,高血圧,不整脈,頭痛,てんかん,手足の冷え,過敏性腸症候群,円形脱毛症, 自律神経失調状態など種々の病態の治療やその予防に用いられています。また,日常の心身の状態を快適に保っておくための,健康増進面でも有用であることが判明しています。さらに,競技を前にした運動選手の心身の管理や精神集中の役にも立っています。また,脳血管障害後のリハビリテーションや失禁予防にも有用であり,間もなく日本が直面する高齢化社会における福祉面でも大きな期待が寄せられています。

 日本バイオフィードバック学会は,上に述べたような"バイオフィードバック"を中心テーマとする学会であり。バイオフィードバックというものの性格から,多くの分野より幅広い人々が参加しているのが特徴です。医師をはじめとする医療関係者,工学研究者や技術者,心理学者や心理療法実践家,スポーツ関係者,教育関係者などです。そしてそれらの分野の学生も含みます。

 本学会は30年以上の歴史をもち,毎年一回の総会と何回かの講習会を開催するとともに,機関紙(バイオフィードバック研究)を発刊しています。また,学会として「バイオフィードバック技能師」を認定しています。

バイオフィードバックに興味と関心のある方々はぜひ本学会に参加して,一緒に活動してみませんか.

沿革

1973年
ハーバード大学医学部の心理学者シャピロ博士が再来日するのを機会に,東京と福岡で第1回バイオフィードバック研究会が開催された. 発起人は石川 中(東京大学医学部)・水口公信(国立がんセンター)・松山義則(同志社大学文学部)・宮田 洋(関西学院大学文学部)・平井 久(上智大学文学部)であった.
1983年
バイオフィードバック学会になる.
1988年
日本バイオフィードバック学会認定バイオフィードバック技能士(「認定バイオフィードバック技能士」と呼ぶ)制度を設けた.(2003年に呼称を技能師に変更)